起業するにはどこがいい?福岡で起業するメリット・デメリット

起業するにはどこがいい?福岡で起業するメリット・デメリット

創業の地をどこにするかは、起業を考えた際に最もはじめに考えることではないでしょうか。都市部での生活疲れによって地方への移住計画をする方や、3.11 東日本大震災時に発生した「帰宅困難者」等の問題や2020年に世界的に蔓延したコロナウイルスの影響により地方への移住・起業への関心は高まっています。

その中、平成27年度の開業率が1位となり、注目されている「福岡市」に焦点を当て、福岡で起業するメリット・デメリットについてご紹介します。

福岡で起業するメリット

国家戦略特区への指定

平成26年5月に、福岡市は国家戦略特区「グローバル創業・雇用創出特区」に選ばれました。これにより、革新的なビジネスにチャレンジする創業企業は、国税と市税の軽減が受けられるようになりました。国税については、最大 5 年間、所得金額の 20%が控除され、法人市民税は最大 5 年間全額免除されることになります。福岡市国家戦略特区「グローバル創業創業・雇用創出特区」

創業支援の充実

創業をこれから目指す方、新たに創業した方に向けた支援施設も充実しています。中でも代表的なのが、官民共同スタートアップ支援施設FUKUOKA growth next です。コワーキングスペースが設けられていたり、常駐するコンシェルジュや士業に無料相談が可能なスペースがあったりと、非常に内容が充実しています。また、起業に役立つセミナーやイベントも多数開催されており、福岡で創業をする方の強い味方になっています

ランニングコスト

ランニングコスト

三幸エステート 「2018年8月-主要都市の賃貸事務所のオフィス市況」より

福岡は他の都市部に比べ賃料も安く、オフィスや店舗を構える上でのメリットがあります。また、同様に家賃も安く、「1部屋における平均家賃相場」は1位東京(71,352円)、2位神奈川県(56,862円)、3位兵庫県(52,173円)となっており、福岡は1位(44,996円)となっています(マイナビスチューデント調べ2015年時点)。そのため、首都圏のように毎朝、超満員の電車に乗って通勤する必要もなく、オフィスの近くに住んでストレスフリーに過ごすことができます。出費をできるだけ抑えたい創業初期には非常に大きな利点となるのではないでしょうか。

人口増加

福岡の人口増加

平成27年国勢調査

福岡市は人口増加数(平成22年10月~平成27年10月の増加数)が最も多い都市です。また、若者(10代・20代)の割合が政令指定都市の中でも最も高く、今最も活気がある街といっても過言ではありません。新たなサービスを提供する市場としても、採用を検討する上にも今後さらに伸びていくことが期待されています。

住みやすい街福岡

アクセスの良さ

福岡空港から博多駅までは地下鉄で約 5 分、多くの商業施設が集まる天神駅までも約10分という近さです。また、福岡空港はアジアの玄関口として、ソウルや台北といったアジアの都市にも、東京に比べてアクセスしやすいのも特徴です。

ご当地グルメ

忘れてはいけないのが福岡の食です!

もつ鍋、水炊き、ラーメン、うどん、新鮮な海の幸等々、リーズナブルで美味しいものを頂けることができます。世界的に見ても人口 1,000 人当たりのレストラン数が多く、細い路地に入っても飲食店が軒を連ねています。ビジネスを軌道に乗せていく段階で様々な困難やストレスを感じることもあると思いますが、美味しいものを仲間と一緒に食べてリフレッシュするのにも福岡の街は最適です。

福岡市調べ

福岡市調べ「Trip Advisor」

福岡市は、市長のリーダーシップの下、様々な施策を現在進行中で打ち出しており、より創業がしやすく、住みやすい街「福岡」になることが期待されています。創業の場所を地方にしたいと考えている方、あるいはまだ決めかねいる方にとって、福岡を選択肢の一つに加えていただけると幸いです。

福岡で起業する前に知ってくおくべき現実

これから福岡で起業しようと考えている方に向けて、メリットばかりではなく、事実も伝えさせていただきます。

「福岡 起業」と検索すると、ほとんどのサイトにおいて“メリット”に焦点がおかれており、“デメリット”については触れられていない場合がほとんどです。しかし、実際に地方で起業を考えている方にとっては“メリット”ばかりでなく、“デメリット”も考慮に入れて創業地を選びたいと考えられている方がほとんどではないでしょうか。

私も、創業の地を福岡に選び、東京から移住した身として、主に東京と比較した現実の福岡をご紹介いたします。

東京開催のイベントが多い

当たり前のことですが、福岡ではいわゆる海外のユニコーン企業の創業者や技術者による講演を聴ける機会はほとんどないといっても過言ではありません。 東京であれば、世界が注目するスピーカーが招かれその講演を聴く機会が多くあります。

もちろんこれは福岡に限った話ではなく、東京以外の国内都市ではこうした機会が少ないといえます。

スタートアップにとって、情報収集や出会いの場は非常に重要なビジネスの場の一つです。ネット上や周りのコミュニティだけではなかなか得られない貴重な情報や、出会いの場となっているのがこういったイベントです。展示会や、IT系スタートアップ向けのイベント、若手起業家の集まり等々。いずれも、東京に一極集中している感が否めないのが現状です。

また、もしこうした東京開催のイベントに福岡から参加する場合、飛行機に乗って東京まで行く必要があります。こうした場合、交通費だけでなく、時間までも浪費してしまうことになります。

東京 <-> 福岡間は往復で約4時間かかりますが、空港からの移動も考えると移動時間だけで半日が潰れてしまう計算になります。

さらに、こうしたイベントは1枚数千円から数万円の高額なチケット購入が必要な場合が多く、交通費や宿泊費に加えての出費となると、在京企業に比べて情報収集という点ではかなり不利になってしまうと言えます。

ですが、最近ではzoomなどオンラインでの開催が一般的になってきたので、上手くオンラインイベントなどを活用するのも一つの手段です。

投資家が少ない

起業家にとって最も大きな悩みの一つが、「いかに投資を集めるか」 ではないでしょうか。どんなに優れた製品やサービスであっても、それを市場に送り出して売上を上げるまで、売上を上げた後も事業を軌道に乗せるまで努力は尽きません。こうした時期に、利息の高い銀行からの融資ではなく、VC(ベンチャーキャピタル)やエンジェル投資家からの投資は非常に大きな利点があります。単に資金を得られるだけでなく、情報提供やアドバイス、顧客紹介など事業や経営に関する支援も受けられるのがメリットです。

しかし、こちらも福岡に限ったことではありませんが、地方に根差したVC、エンジェル投資家は多くありません。 また、東京の投資家からは地方に起業するということだけで倦厭され投資を受けられないこともあります。

福岡に拠点を構えるスタートアップの資金調達額は直近1年で総額30億円超えと言われています。 一方で、2017年の国内スタートアップ企業全体の資金調達額は2,921億円であり、福岡における資金調達の割合はそのうちの約10%であることが分かります。

起業家のコミュニティが小さい

2014年に国家戦略特区に指定されて以降、福岡市の開業率は増加し、2016年の調査では21大都市中1位(3年連続)となっています。

一方で、福岡の投資家からは「東京と比べて、起業家の数がまだまだ足りない」という声も上がっており、要因として、リクルートのような起業家を輩出する大手企業が少ないことが指摘されています。

さらに、在京のスタートアップのように大型資金調達をしたり、話題の新規上場企業となったりするような、ベンチマークとなる企業がまだなく、競争意識が低い傾向にもあるといえます。

その要因の一つに、福岡で開催されるイベントやコンテストにおける主催者、審査員、投資家、参加者いずれもが同じような顔触れであることがあるといえます。結果的に、いつもの仲間と話している感触では通常だと思っているスピードで走っていたら、一緒にスタートしたはずの在京スタートアップは、既に遥か前に進んでしまっている可能性が高いということを、意識しておかなければいけません。

外国人を受け入れる体制が不十分

福岡市は「グローバル創業特区」して、「グローバル」性にも力を入れていますが、まだまだ外国籍の方を受け入れる体制は十分とはいえません。 特に、日本語を話せない、日本に来たばかり、日本で就職した経験がない外国籍の方にとってはハードルが高くなっています。

中でも地方銀行における口座開設や、アパートやマンションの賃貸借契約においては非常に障壁が高い傾向にあります。賃貸借契約については、東京であれば、保証会社あるいは連帯保証人を選択することにより、審査が行われ契約という流れになります。しかし、福岡の場合は保証会社と連帯保証人を両方利用することが商習慣的に必須となっています。連帯保証人は「日本人」であることを当然要求されますので、上記の「ないない尽くし」の外国籍の方にとっては如何に苦労が多いかわかります。

事実として、福岡に拠点を構える外資系企業は22社となっており、構成比でみるとわずか約0.6%となっています。 また、従業者ベースでみると2.6%であり、決してグローバル化が進んでいるとは言えない状況にあります。

東京へのアクセス

東京へのアクセス比較

福岡市はコンパクトシティといわれ、空港から市街地までのアクセスの良さが好評です。 しかし、東京駅からの距離を見ると博多駅から要する時間は、札幌駅からのそれと大きく差がないことが分かります。

札幌駅から新千歳空港までは快速で約40分かかる距離ですが、東京へ出張ということを考えるとその利点はあまり大きいとは言えないようです。

また、福岡市内で最も利用者の多い福岡市営地下鉄の初乗り運賃は、東京や大阪といった都市に比べると割高で210円(大人)、4駅程乗ると260円(渋谷駅‐赤坂見附駅間は165円)となります。

電車に代わる交通手段として福岡市内はバスが非常に発達しています。バスについては目的地の近くまで行けるという利点がありますが、恒常的に遅れが発生しており、数本前の便に乗る必要があるなど調整が必要です。

その渋滞の要因に、バスの本数の多さにあるともいわれています。博多駅や天神駅を目的地とするバスは、数分おきに出ており、信号待ちの車列に数台のバスが並んでいることも珍しくありません。

地方特有の良さもあれば、まだ不利な点が残っています。こうした事実も事前にしっかりと受け止め創業地選びの判断材料にしていただければと思います。

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