変動費、固定費の違いとは。費用節減は固定費から?

変動費、固定費の違いとは。費用節減は固定費から?

前回の第1回でご紹介した「管理会計」は、「損益分岐点分析」や「原価計算」を扱うということをご紹介させていただきました。

こうした分析や計算において、「変動費」と「固定費」という概念は非常に重要な視点となりますので、ここで解説させていただければと思います。

変動費とは

まず、変動費についてはご説明いたします。変動費とは簡単に言うと、「売上に比例して増減する経費」のことをいいます。

一般的に、原材料費、仕入原価、販売手数料、消耗品費などがそれにあたります。


【仮定】100枚のお好み焼きを作るのには、100枚分の原材料費を必要とする

⇒ 50枚しか売れないのであれば50枚分で足りる

⇒ お店が繁盛して1,000枚売れるようになったならば、1,000枚分の原材料費が必要

このように、原則として売上に比例して費用が変動するものは変動費とされます。

固定費とは

さて、一方で固定費とは変動費とは逆に、「売り上げの増減に関わらず一定の費用」のことをいいます。

具体的には、従業員に支払っている給与や、事務所の家賃、広告費用などがあります。これらは、会社が製品やサービスを製造、販売しなくても、必ず支払いが発生する費用という共通点があります。

このように、原則として売上の増減に関わらず費用が固定で発生するものは固定費とされます。

なお、人件費は一般的には固定費となりますが、残業手当や、派遣社員の給与などは変動費として捉えることもできます。

分類方法

固定費と変動費に費用を分類することを、「固変分解」といいます。種類としては、「勘定科目法」、「数学法」、「撒布図法」、「最小二乗法」といった方法があります。

ここでは、実務でもっとも多く使われる「勘定科目法」について解説いたします。

勘定科目法

勘定科目法とは、勘定科目の性格に従って固定費と変動費に分ける方法のことです。

勘定科目別に固変属性(固定費なのか、変動費なのか)を定義し、自動的に固定費と変動費に振り分けることになります。

ただし、勘定科目法では厳密な固変分解には適していないという側面もあります。

勘定科目によっては、変動費と固定費どちらにも含まれる場合があり、どちらかに振り分けるのは難しいこともあります。

そうしたどっちにも振り分けられないものについては、準変動費準固定費という考え方があります。

準変動費とは、仮に操業をしていない場合でも一定額発生し、操業度※の増加に比例して増加する、電力料金があたります。

一方、準固定費とは、一定の範囲内では増減しなくても、ある水準を超えると一気に変動するのを繰り返す費用のことをいいます。

例えば、あるバス会社において乗客が増加して増やす場合のバス費用(減価償却費、保険料、リース料)などがあります。

※ 操業度とは、生産活動や販売活動の程度を表す尺度です。例えば、機械設備の稼働時間、作業者の直接作業時間、生産量、販売量、売上高などのことをいいます。

種類

固定費の範囲は?

さて、結局のところ固定費の範囲は何かというと、材料費、外注費、商品原価、ロイヤルティなどの変動費以外のすべての費用を固定費といえます。(具体的には、減価償却費、固定資産税、火災保険料、リース料、不動産賃借料、給与、役員報酬、支払利息、受取利息など)

なぜなら、これらの費用は、ビジネスを続けるために必要な経費であり、毎月ほぼ固定的に発生するものだからです。

コスト削減をするなら固定費から

変動費、固定費の定義についてご理解いただいたところで、実務の面からコスト削減をするなら一体どちらから手を付けるのが良いのかを考えていきたいと思います。

変動費と固定費の性格

まず変動費と固定費、それぞれの特徴からコスト削減を行った場合の効果見てみます。

変動費とは、売上に伴って変動する費用(材料費、商品原価など)でした。

つまり、変動費は製品やサービスを生産する際にかかる必要経費であり、積極的に節減すべきものとはいえません。食品業界であれば、国内産から外国産の材料に置き換えることや、ワンランク下の材料を利用することによって変動費を節減することができます。

しかし、一方でその商品の質を落としているということになります。その結果、商品の品質を支持してくれていた既存顧客も失いかねないことになります。

固定費削減の一例(人件費の節減)

人件費は会社の中で一番高い経費だとよく言われます。人件費削減と聞くと、すぐに思い浮かぶのがリストラですが、リストラ以外にも人件費削減には方法がいくつかあります。

① 外注、アルバイト、派遣を活用する

今社内で行っている業務を外注したり、アルバイト等の有期雇用労働者に仕事を分配することも人件費削減につながります。

一見すると、その分費用が増えるように感じますが、正社員として雇用した場合を比較すると下記のようになります。

a: 正社員1名を月額20万円で採用する場合(39歳以下の場合)※概算

給与・各種諸経費給与200,000円法定福利費32,000円交通費15,000円合計247,000円

b: 正社員1名分の仕事を派遣社員2名(各月額10万円)で行う場合※社会保険加入なし

給与・各種諸経費給与200,000円法定福利費0円交通費30,000円合計230,000円

概算ではありますが、社会保険に加入義務のないアルバイトを2名雇用した場合、若干ですが正社員1名を雇用する場合に比べて費用が少なくて済むことが分かります。

これが12か月続けば、上記の例の場合約12万円の差額が発生することになります。

また、必要に応じて外部発注(アウトソーシング)し、活用することも一つの方法です。繁忙期や、大きな案件が発生し一時的に人員が足りないような場合には非常に有効な方法であると言えます。

② 機械化、デジタル化を進める

また、機械化、デジタル化を進めることで、効率の悪かった作業が効率化し、人員を拡充しなくてよくなり、固定費だけでなく変動費の残業代も削減できる可能性があります。

例えば、帳簿管理については税理士に依頼するのではなく、会計ソフトを導入し自社で管理すれば、事業規模や量にもよりますが、月数千円から数万円の経費削減になります。

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