「管理会計」ってよく聞くけど何をすることなのか、何のためにすることなのか、答えられますか?
経理担当者や経営者にとっては当たり前のことだとは思いますが、「管理会計」は経理担当者や経営者だけのものではなく、その他の従業員にとっても深く関わっています。
会計は、大きくとらえると「制度会計」と「管理会計」に分けられます。また、その「制度会計」はさらに「財務会計」と「税務会計」に分けることができます。
今回は、その財務会計と管理会計に焦点をあて、管理会計とは何か、管理会計と財務会計の違い、管理会計を用いることの利点について解説していきたいと思います。
管理会計とは
管理会計とは、読んで字のごとく「企業内部で管理を行うための会計情報」のことをいいます。
この情報は主に経営者や管理者層が、意思決定を行ったり、業績の評価に用いたりと、自社の現状把握や今後の経営のかじ取りを目的としています。
管理会計は後述する財務会計とことなり、企業内部で独自に行うものですので、会計期間は月単位でも、週単位でも問題なく、形式も任意の方法で作成可能です。
したがって、自社の業態や商品、サービスに合わせて適切な管理会計を用いる必要があります。
一例として、管理会計では下記のようなものを扱います。下記項目についても機会があれば当ブログでも解説したいと思います。
・原価計算
・キャッシュフロー分析
・収益性分析
・損益分岐点分析
・予算管理、予実管理
このように管理会計は、様々な側面から意思決定のために経営を分析することになります。
財務会計とは
財務会計とは、ステークホルダー(利害関係者)※に向けて情報開示をするための会計のことをいいます。
企業は、決算時に作成される財務諸表を情報開示することになります。この財務諸表※をステークホルダーへ開示することが財務会計の主な目的となります。
※ステークホルダーとは、株主、債権者、投資家、取引先などを指します。
※財務諸表とは、賃借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書など会社の経営成績や財務状態等を明らかにするための書類を指します。
管理会計との違いは
月並みな表現でいうと、財務会計は「過去の業績を振り返るもの」で、管理会計は「未来の意思決定のために活用するもの」といえます。
財務会計は、過去の会計取引の結果を外部に向けて書類を作成することを目的として用いるのに対して、管理会計は未来の意思決定に備えて内部向けに作成されるという違いがあります。
管理会計を活用するメリット
さて、管理会計とは何かをご理解いただけたところで、管理会計を導入することのメリットについて解説していきます。
部門別の損益が見えるようになる
まずは部門別の損益が見えるようになるということがいえます。事業規模が小さかったり、事業やサービスが一つしかない場合は会社全体として捉えても問題ないと思われます。
しかし、会社の規模が大きくなると、事業や組織、商品別、地域別といったセグメントごとに会計情報を把握することが必要になります。
管理会計を用いれば、どの部門で黒字だったのか、赤字だったのかが、何が原因でそうなったかが見えるようになるという利点があります。
現場への影響
こうしたセグメントごとの見える化にともなって、現場においても良い影響が表れてきます。
例えば、現場の目標が明確になったり、現場レベルでも経営の感覚が身についたり、といったことが考えられます。
ある部門がもし赤字であるならば、現場としては「無駄な費用がないかを見直す」、「売上をあげる必要がある」などといった目標を立てることへ繋がります。
また同時に、当該部門を管理する責任者にとっても、そうした目標が上手くいっているかという、なぜ上手くいっていないかという経営的な視点を持つことができるようになるというのが、現場への良い影響といえます。
導入の注意点
そうした管理会計を導入にするにあたって2点注意すべきポイントがあります。1つは事前に「全社でルールについての周知と合意をとっておくこと」、2つ目は「定期的に行うこと」です。
社内での周知と合意
管理会計は財務会計と異なり、決まった型が存在せず、全て企業ごとにルールを独自に定めると述べました。
これは裏を返せば、事前にどういった「単位(部門、商品やサービスごと)」で「ルール(どのように)」で行うのかをしっかりと決めておく必要があるということです。
特に複数の部門や商品、サービスがある場合は、統一したルールを事前にしっかりと周知、合意が図れていなければ、異なったルールに基づいた数値を集計することになり、管理会計の目的が達成されなくなってしまいます。事前によく社内で話し合い、ルールをしっかりと決めておきましょう。
定期的に行う
しっかりとルールが策定できた後は、実際にモニタリングを行うこととなります。どのような頻度で行うにしても、モニタリングは定期的に行わなければなりません。
スプレッドシート(Excel等)で管理を行う場合は、導入時にシート作成のために時間を多く費やしたり、管理が煩雑化したり、リアルタイムで管理ができないというデメリットがありますので注意が必要です。
ERP(統合基幹業務システム)など、統合的なビジネスインテリジェンス環境を構築すれば各部門や商品、サービスごとに点在している情報を、統一した仕様のもとで進捗状況を把握できると同時に、リアルタイムで管理、分析できるという点で非常に優れています。
これを機に、効率的な管理会計のためにERPの導入を検討してみてはいかがでしょうか。