管理会計基礎シリーズとして、前回まで、「固定費・変動費」、「損益分岐点分析」について解説してきました。
今回ご紹介する「限界利益」は、損益分岐点分析を行う上で重要にかかわってくる指標になります。
そこで、損益分岐点分析との関係にも触れつつ、限界利益とは何か、どのように役立つのか見ていきましょう。
限界利益とは
限界利益は、売上高から変動費を引いたものを指します。(固定費の回収にも貢献することから、貢献利益ともいわれることもあります。)限界という言葉を聞いてなんとなく、とっつきにくいイメージを持たれる方もいらっしゃいます。
この「限界」は英語の”marginal profit”を翻訳したものですが、言葉からその意味は想像し難いので、「限界」という言葉に惑わされずに読んでいただければと思います。
限界利益率とは
限界利益率とは、売上高に対する限界利益の比率です。この限界利益率が分かると、複数の製品を比べた際に限界利益率の高低により、「利益を生み出すために必要な売上高」が見えてくるようになります。
ここで会社 X が製品 A と製品 B を製造していると仮定した場合、実際に限界利益率がどのようにかかわってくるか見ていきたいと思います。
まず下記に現状の製品 A、B の売上高及びその費用等を示し、売上高が変動することによってこれらがどのように変わってくるかを見ていきます。
製品 A製品 B売上高(万円)100, 100変動費(万円)60, 20固定費(万円)20, 60限界利益(売上高-変動費)20, 80限界利益率(限界利益 ÷ 売上高)40%, 80%利益(売上高-総費用)20, 20損益分岐点売上高(固定費 ÷ 限界利益率)50 万円, 75 万円
1.売上高が2倍になった場合
製品 A製品 B売上高(万円)200, 200変動費(万円)120, 40固定費(万円)20, 60利益(売上高-総費用)60, 100
売上高が 2 倍になると、理論上は変動費もそれに合わせて増加するはずですので、製品 A の場合は60 万円 → 120 万円に製品 B の場合は20 万円 → 40 万円になります。
一方で、固定費は理論上変動しないので、利益がそれぞれ製品 A では 60 万円、製品 B は 100 万円となります。
ここで分かるのは、限界利益率が高いほど(今回の場合は製品 B)売上高が伸びた場合、利益が多くなるということです。
これは言うまでもなく、固定費に依存している割合が大きいため、売上高増により変動費が増える割合が少なくて済むためです。
他方で、限界利益率が高い場合は、損益分岐点売上高も同時に高くなるため、売上高が伸び悩んでいる場合は利益が出にくくなることに注意が必要になります。
2.売上高が 25%減少した場合
製品 A製品 B売上高(万円)75, 75変動費(万円)45, 15固定費(万円)20, 60利益(売上高-総費用)100
中途半端な数字ですが、便宜上 25%の売上が減少した場合を仮定してお話します。
売上高が 25%減少した場合、固定費はそのままで、変動費がそれぞれ製品 A は60 万円 → 45 万円、製品 B は20 万円 → 15 万円となります。
それに合わせて利益も変動し、製品 A では 10 万円の黒字、一方の製品 B では 0 万円となり売上高=費用となっています。
この1と2の例から、限界利益率が高い場合は攻めに強く、限界利益率が低い場合は守りに強いということが分かります。
売上高がどんどん伸びている攻めの状態であれば、限界利益が高くても問題はなさそうですが、売上高が落ち混んでいる守りの状態では注意が必要になります。
もちろん、実務上は売上高が伸びている時期に、固定費が増えるといったことも十分あり得るため、簡単に判断できるものではありませんが、一つの指標として覚えていても損はないと思います。
さて、いかがだったでしょうか。今回のテーマは「限界利益」についてでした。
お読みいただいて、ご理解いただけたように今回の内容については 損益分岐点分析(CVP 分析)に非常に密接にかかわってくるもので、むしろ損益分岐点分析のために「限界利益」という指標があるともいえます。
CVP 分析を実務に生かしていただければ、担当者レベルにおいても、事業やサービスに対する見方も変わってくるのではないでしょうか。