10人未満の小規模事業者必見!住民税の納付は年2回でOK

10人未満の小規模事業者必見!住民税の納付は年2回でOK

平成29年度課税分から全国の自治体において、原則として全ての事業主に対して特別徴収義務者の指定(特別徴収税額の通知)を一斉に実施しています。

そもそも、所得税の源泉徴収義務のある事業主は、法令( 地方税法第321条 の4及び市町村条例)により、特別徴収義務者として指定され、従業員の方の個人住民税を特別徴収することになっていました。

しかし、法令上の規定を遵守しない事業主が多かったために、平成29年から特別徴収を強化するという方向性になりました。

事業主側からすると納付の手間や入退社時の事務処理が増えるだけでなく、納付する役所の市区町村に支店を置く金融機関(ゆうちょ銀行含む)から納付をした場合、手数料はかかりませんが、それ以外の金融機関で納付した場合は手数料がかかってしまうなど、事業主にとってはデメリットが多い制度です。

そこで今回は、 「10人未満」 という限定ですが、そういった事務処理を少しでも軽減する手助けとなる 「特別徴収税額の納期の特例」 という制度について解説させていただきます。

そもそも特別徴収とは?

個人住民税の納付方法には大きく分けて二種類あります。「普通徴収」と「特別徴収」です。

普通徴収とは

「普通徴収」とは、住民税を個人で振り込む方法のことをいいます。自営業者、フリーランスの方など特別徴収の対象にならない場合はに適用される徴収方法となります。

普通徴収の場合は、分割と一括納付を選択することができます。

  • 分割: 4回に分けて納税(6月末、8月末、10月末、翌年1月末)
  • 一括: 6月末に納税

最近では、手数料を負担する必要はありますが、クレジットカードや電子マネーでの納付も可能となっている自治体もあるようです。(例 福岡市 クレジットカードでの納付

特別徴収とは

一方「特別徴収」とは、会社が従業員の給与から毎月天引きを行い、自治体に納付する方法のことを言います。

給与支払報告書に基づき、毎年5月頃に事業主宛に各自治体から「納税額通知書」が送付されます。12か月で分割(初月の6月は端数を加算しているため他月より若干多め)されており、それに基づき事業主は給与から天引きを行い、翌月の10日までに各自治体へ納付することとなっています。

普通徴収と異なり、年12回の支払いであるため、従業員にとっては1回あたりの税負担が少なくて済みます。

しかし、主要都市ではペイジー(Pay-easy)という機能を使ったネットバンクによる電子納税が普及していますが、福岡県内でみると福岡市以外は電子納税が「不可」となっており、基本的に事業主は都度銀行に行って手続きをする必要があります。

起業を考えらている方は、拠点を福岡市にすることをおすすめします。

東京23区も対応しておらず、対応している自治体はむしろ珍しいといえます。なお、ほとんどの銀行で有料ですが、住民税の納付を代行している場合もあります(地方銀行は全ての自治体に対応していない場合があります)。

特別徴収税額の納期の特例

さて、特別徴収についてご理解いただいたところで、「特別徴収税額の納期の特例」について解説させていただきます。

制度の概要を簡単にいうと、「毎月従業員の給与から天引きしておいて、役所へは年2回まとめて納付する」という方法です。

  1. 「納税額通知書」に記載の月割額で毎月の給与から徴収
  2. 6月~11月分を12月10日までに納付
  3. 12月~5月分を6月10日までに納付

という流れになります。

ただし、ここで注意しなければならないのは、給与支払義務のある従業員が常時「10人未満」であることを満たしていなければならないということです。

繁忙期等に臨時でアルバイトを雇った場合等を除いて、従業員数が10人以上となる場合は、届け出を行い、この特例を取り消す必要がありますので注意しましょう。

手続き方法

いつまでに届け出る?

この納期の特例は非常に便利な制度ではあるものの、事前に届け出をしていなければ、この特例を認めてもらうことはできません。

そのため、起業したのち従業員を雇用することになった場合は、速やかに届け出ることが肝要です。

なお、この制度を利用するに当たっては自治体により期限が異なっているようです。

福岡県内を見ると福岡市では、特に期限を書いていませんが、春日市の場合は適用を希望する月末までに届け出る必要があります。

このように自治体によって期限が異なっていたり、期限を明記していなかったりと対応が異なりますので、もし不安な場合は事前に、 いつまでに提出したら、どの月から適用が可能か問い合わせすることをお勧めいたします。

フォーマット

手続きには各自治体のフォーマットを使用します。各自治体のHPでダウンロードできるほか、「自治体名+特別徴収納期の特例」と検索すれば、 容易に見つけることができます。

なお、ここでいう各自治体とは、当該従業員が住民税を納付すべき自治体となります。

会社の所在地ではないことに注意してください。 また、従業員が普通徴収を行っている場合は、特別徴収への切替届も併せて提出する必要があることにもご注意ください。

記載方法

各自治体によって若干フォーマットが異なりますが、記載すべき内容は共通していますので、福岡市のフォーマットで解説させていただきます。

納期の特例記載方法
① 申請者

会社の住所、会社名、代表者氏名を記入し、代表印を押印します。

② 指定番号

特別徴収義務者(会社)ごとに割り当てられた番号です。毎年5月ごろに送付される納税額通知書に記載されています。

  • ※ 新たに会社を設立した場合などは、この番号は発行されていませんので空欄でも問題ありません。
③ 電話番号

会社の電話番号を記入します。

④ 特例の適用を受けようとする税額

適用を希望する月を記入します。

  • 例:7月分からの適用を希望する場合、 平成30年7月分(8月10日納期限分) と記入します。
  • ※ 住民税の納付は 翌月10日が納期限 となっています。
⑤ 申請日前6ヶ月間の各月末の給与を受ける者の人員及び各月の支払金額

申請日前6ヶ月分の従業員への給与支払実績を記入します。

※ 役員報酬は該当しないので記載不要です。 ※ アルバイト/パートなどの臨時勤務者は外数に記入します。

⑥ 納入遅延、過去に納期特例承認取り消しを受けたことがあるか

過去に住民税の納付遅延があったり、過去に納期の特例を申請し、取り消しをしたりしたことがある場合は「有」に〇をします。

⑦ 所得税源泉徴収税額の納期の特例に関する申請書の提出の有無

文字通り、当該申請書を提出している場合は「有」に〇をします。

注意事項

  1. 常時雇用する従業員が10人以上になった場合は速やかに届出を行い、取り消し処理をする必要があります。
  2. 納期の特例を受けることができるのは届け出を行った場合のみです。納付先が複数ある場合は全ての自治体に届け出る必要があります。
  3. 退職者が発生した場合は納付金額が変わるので注意する必要があります。
  4. 1回あたりの納付額が増えますので、資金繰りに注意しましょう。
  5. 所得税源泉徴収税額の納期の特例を受けている場合、納付時期が1か月ずれますので、混同しないように注意しましょう。

申請が承認されたら

申請が承認されたら、当該自治体より納付書が送付されてきます。納付期限が「12月10日」のものと「翌年6月10日」のものが送付されますので、後は納付期限を守り納付するだけで大丈夫です。

リソースが限られた中、あれこれとやらなければならないことが多いスタートアップにとって、こうした制度はぜひ活用したいですね!

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