マーケティングにおける「ペルソナ」と呼ばれる手法は、大企業を中心に広く採用され、新商品/サービスを市場に送り出す際に非常に重要な役割を担っています。
そこで今回は、ペルソナとは何か、どういったメリットがあり、どのように行うのかについてご紹介させていただきます。
ペルソナとは
ペルソナとはマーケティングにおいては、製品やサービスのユーザー像を架空の人物として定義したものをいいます。
ペルソナ(persona)とは、元々「仮面」を意味するラテン語で、英語においては転じて人間・人格の意を持つようになりました。
氏名、年齢、性別、学歴、職業、家族構成、趣味などの非常に細かい部分まで深堀して、あたかも実在する人物であるかのように設定することが特徴です。
セグメンテーションとの違い
マーケティングプロセスの記事でセメンテーションについて触れましたが、ペルソナとセグメンテーションはよく混同される手法ではあります。
セグメンテーションは上記の例で言えば、年齢や性別といった定量的なデータによって分類されたものでした。
一方で、ペルソナはそうした定量的なデータだけではなく、さらに深堀した家族構成や趣味といった、生活スタイルといった定性的なデータにまで範囲が及んでいます。
つまり、ペルソナはセグメンテーションよりも深堀した手法といえます。
なぜペルソナ設定が必要なのか
では、なぜマーケティングにおいてペルソナ設定が必要なのでしょうか。理由は大きく 2 つあるといわれています。
インターネットの普及による社会環境の変化

1 つには、インターネットの普及による社会環境の変化にあります。
通勤・通学途中の電車内で老若男女問わず、スマホにかじりつき、SNS やネットに常にアクセスしている状況はその変化を如実に表しています。
こうした社会環境の変化によって、ビジネスの機会や環境も同時に変わってきたというのが、一つ目の理由です。
顧客の価値観が多様化
2つ目に、顧客の価値観が複雑化してきたことにあります。
家電でいえば、日本では、かつて「三種の神器」や「3C」いわれた製品は、もはや当たり前のモノとなり、先進諸国ではこうした生活費需品は一通り行き渡っています。
これまでは、家電量販店で買っていたものが、いつでもどこでもネット上で購入できるようになりました。
TV 一つとってみても、防水、持ち運び可能、壁掛けタイプ、などなど人々の暮らしや目的によって多様化しています。
こうした、多様化するニーズに対して、どのような商品が受け入れられ、ヒットするのかは予測が非常に難しくなってきています。こうした、顧客の価値観の複雑化に応えることが2つ目の理由といえます。
担当者間での認識の共通
また、ペルソナの設定はマーケティングに関わる複数の社員にとってイメージを共通化させることにもつながります。
例えば、「40 代 女性」という定量的なデータだけであれば、個人によってイメージするものが異なり過ぎて、認識の相違が生まれかねません。結婚しているのか、子供がいるのか、都市部に暮らしているのか、など個人によって想像するものが異なります。
しかし、ペルソナの設定を行うことによって、バラバラだった認識の統一が行われ、有効なマーケティングを行うことが可能になります。
ペルソナの作り方
ペルソナを使ったマーケティングを成功に導くためには、次の 5 つのステップを踏む必要があります。
情報収集
情報については、冒頭で触れたように定量データと定性データという、大きく分けて二つの種類があります。
定量データは、政府が行っている国勢調査や人口推計などいった各種調査資料に基づいて収集可能です。
その他にも、各業界団体によって行われている調査も非常に有益です。
例えば、日本クレジットカード協会が行った「キャッシュレス社会の実現に向けた調査」など、業界がテーマとしている事柄について、調査結果が HP 上で容易にアクセス可能です。
一方で定性データは、定量データのように一義的に計測できるものではないため、アンケートやインタビューによって収集をすることになります。
要素のグループ化
続いては、要素のグループ化です。アンケートやインタビューによって得られた情報を基にして、共通点をグループ化していきます。
一つの手法例ですが、ポストイットにアンケートやインタビューで得られた回答を一つひとつ転記し、それを共通項目ごとにグループ化を行っていきます。
ペルソナ骨格の作成
ここまでのステップを終えると、次はペルソナの骨格部分を形成していきます。ペルソナを具体的に作成し始める前に、定性データを洗い出し、どの部分を肉付けしていくか、優先するかなどを決めていきます。
ペルソナの作成
そうして得られた骨格を基に、ストーリー化を行います。ここで注意すべきなのは、このストーリーはペルソナの視点で書くということです。
どうして、そのようなライフスタイルなのか、何を重視し商品を選んでいるのか、などペルソナの視点で商品・サービスを見る必要があります。
また、理想の顧客像を描くのではなく、現実的な顧客像を描く必要があります。
ペルソナは 1 人だけ設定するのではなく、自社の商品やサービスにあわせて、複数設定することも必要です。
例えば、若者向け男性用香水を展開しようとする場合、メインペルソナは20代男性となります。
一方で、20 代男性とお付き合いしている女性や結婚している女性もプレゼント需要としてサブのペルソナと設定することも可能です。
このように、一つの商品やサービスについて多角的な視点から見て必要があれば複数のペルソナを設定することをおすすめします。
ただし、ペルソナの数が多くなれば、元の木阿弥となって、最初の目的を見失いかねないことに注意が必要です。
確認と検証
最後に、完成したペルソナを検証しなければなりません。ここで先ずすべきことは、最初に収集した情報に基づいて作成されているのかを確認することです。
データに基づかないペルソナは、現実に基づかないものになりますので、ペルソナそのものが全く意味をなさなくなってしまいます。
次に、製品やサービスの対象者(ユーザーになる人)に実際に接している人に確認をしてもらう必要があります。
ペルソナを作成した人と、アンケート等で実際に接した人が異なる場合は、紙面上で得られる情報によって作られたペルソナは、実際の意味するところと乖離してしまう可能性があります。もし、作成者が異なる場合は必ずチェックしてもらうようにしましょう。
完成して終わりではない
こうして完成したペルソナですが、この検証を終えて完了ではありません。
実際にマーケティング活動を行っていく中で、対象者への理解が深まりペルソナの精度が上がっていくことも考えられます。
一度作って終わりにしてしまうのではなく、精度を向上させより有益なツールにしていくことが重要です。
また、こうしたペルソナの設定はあくまでも、紙面上でのものであるため、ペルソナの作成に関わっていない人からすれば、容易に理解できるものではないかもしれません。
したがって、そうした対象者あるいはユーザーと実際に会って話を聴く機会があれば、積極的に活用するほうがよいでしょう。
紙面上で語られるストーリーよりも、生で聞くストーリーの方がより想像しやすく、実際にどういった場面で利用されているのか、何を求めているのかより具体的にできます。
ペルソナ手法を利用したマーケティングは、BtoC における実例が多くありますが、BtoB においても同様に通用する手法です。
経営者や責任者はどういった悩みを抱えているのか、なにを解決したいと考えているのかなど、BtoC におけるユーザーを経営者や責任者に置き換えれば、そのまま適応できます。
インターネットの普及、消費者の価値観の多様化に伴い、重要性の高まっているペルソナマーケティング。
ペルソナの手法だけを採用するのではなく、旧来の手法と上手くミックスさせながら活用していくことが求められています。